三月のライオン(漫画)
ちゃぶ台の上に並んだ料理が、艶やかに、鮮やかに描かれた作品って、作品全体が、好感が持てる、というか愛おしいものが多くないですか?
「艶やかに、鮮やかに」って言っても、レストランのWebサイトに掲載されている写真のような、洗練されすぎて現実味のない感じではなく、もっとベトベトやジョリジョリの質感を訴えてくるような、生活感を纏った描きかたの食卓の料理ね。
小説での食事の表現もいろいろあるけど、
(ぱっと思いつくのはエッセイですが、平松洋子さんのがいつも美味しそう)
映像だと特に、「食事の風景」って、その人をめぐる環境を一瞬で説明する力があるんだろうな。
「三月のライオン」で描かれている、あかりさんとひなちゃんの作る「ごはん」は、ホカホカでアツアツで、漫画に描かれている台所の様子は、いかにも美味しい料理がつくられそうな風情で、あったかくって、食べる人の身体も心も溶かしていく。
隅田川周辺の下町の景色と、古い小さな家の、みんなで囲むちゃぶ台での食事。
すんごい日本人的。小津安二郎的。零くんのモノローグもポエティック。
悲しいことも苦しいことも、全部、そっと支えあって、飲み込んでいこうね、というひたむきさとか、強さとか、そういうものを感じるよ。
主食がハンバーガーの人にはわかんないだろうなぁと思うわ。偏見かな?
「ちはやふる」が”かるた(百人一首)”と”恋愛”を”青春”という軸に巻き付けて進んでいくのに対して、「三月のライオン」は、”将棋”と”家族”を”成長”に巻き付けて進んでいくような感じ。
ほぼすべての登場人物に共感したり愛情を抱いてしまう点で、群像劇でもあるんだろうな。大好きな作品です。
ごちそうさまです。
続きにも、映画にも期待してます。